Press release | 14 11月, 2018

保全行動のおかげでナガスクジラとマウンテンゴリラの個体数が増加 – IUCNレッドリスト

2018年11月14日 グラン(スイス)(IUCN) – 本日公表の『IUCN絶滅危惧種レッドリスト』によれば、保全行動の結果、ナガスクジラとマウンテンゴリラに新しい希望をもたらしたことがわかった。ナガスクジラの保全状況は捕鯨禁止により「危機(EN)」から「危急(VU)」へと改善された。亜種であるマウンテンゴリラは、協同的保全努力により「深刻な危機(CR)」から「危機(EN)」に移動した。

今日のIUCNレッドリストの更新版は、過剰漁獲が途上国の一部で魚種が減少している原因となっていることを明らかにした。世界のハタ類の13%、マラウイ湖の魚種の9%が絶滅危惧となっている。アフリカローズウッドの一種であるヴェネ(Pterocarpus erinaceus)は重要な木材樹種であるが、過剰伐採によりIUCNレッドリストで「危機(EN)」と判定された。

現在IUCNレッドリストには、96,951種が掲載されており、そのうち26,840種が絶滅の危惧にある。

IUCN事務局長のインガー・アンダーセン女史は、「今日のIUCNレッドリストの最新版では、ナガスクジラやマウンテンゴリラの個体数回復に見られるように、保全行動の力を示してくれた。これらの保全成功事例は、政府、企業、市民社会による野心的で協同的な努力が種の損失という潮流を元に戻すことができるという証拠である。残念なことに、今回の最新版は、いかに生物多様性への脅威が食料安全保障など社会の最も重要な目標のいくつかを蝕み続けていることを強調することにもなった。効果的保全行動を緊急に強化、維持することが必要である。エジプトで開会中の国連生物多様性サミットは、私たちの惑星の生命の多様性を守るため断固とした行動をとるための価値ある機会を提供するだろう。」と言う。  

鯨類の個体群が回復中

これまで「危機(EN)」に掲載されていたナガスクジラ(Balaenoptera physalus)は、世界全体での個体数が1970年代からほぼ倍増したことから、「危急(VU)」に分類された。この回復は、北太平洋と南半球で1976年以降実行されている商業捕鯨の国際的禁止と、1990年以降の北大西洋での捕獲数の大規模な削減の後に起こっている。コククジラ(Eschrichtius robustus)の西部太平洋下位個体群の保全状況も、「深刻な危機(CR)」から「危機(EN)」へと改善された。これらの鯨類のいずれも本皮、鯨油、鯨肉目的の過剰捕獲により歴史的に脅威に晒されていた。

「ナガスクジラと西部太平洋のコククジラは捕鯨により大きく減少した。漸く増加に転じたことでほっとしている。これらの鯨類の生息状況は、商業捕鯨の禁止、国際協定、いろいろな保護措置のおかげで、大きく改善している。これら個体群が絶滅危惧でなくなるまで保全努力を続けなければならない。保全のために政府、業界、市民社会が一緒に行動するというこの事例は、今週エジプトで開かれている生物多様性条約会議に集まっている締約国に対して、重要な示唆を与えるはずである。」とIUCN種の保存委員会鯨類専門家グループ委員長のランドール・リーブズ 氏は言う。

ナガスクジラの分布範囲全域でのほぼ完全に近い保護により、世界全体の成熟個体数は約10万頭に達した。西部太平洋のコククジラは1980年以降、ほぼ分布国全域で商業捕鯨から保護されてきた。しかし、西部太平洋、とくにロシアの樺太沖で個体数増加の明白な証拠が見つかったのはほんの最近のことである。保全措置が効果を発揮する時期とコククジラの個体数回復が確認される時期に差があるのは、一部には、この鯨種の繁殖の速度がゆっくりしていることによっている。コククジラの5つの分布国、つまり日本、ロシア、韓国、アメリカ、メキシコが「西部太平洋コククジラ個体群の保全措置に関する協力覚書」に署名している。

マウンテンゴリラに見る希望

このIUCNレッドリストの更新版は、マウンテンゴリラ(Gorilla beringei beringei)に希望をもたらすものである。この亜種は、国境を越えた協同的保全努力とマウンテンゴリラの生息環境周辺に暮らしている地域社会の積極的な関与により、「深刻な危機(CR)」から「危機(EN)」へと生息状況が改善した。マウンテンゴリラは、ヒガシゴリラ(Gorilla beringei)の2亜種のひとつである。ヒガシゴリラは種全体としては依然「深刻な危機(CR)」のままである。

2008年のIUCNレッドリスト評価結果の公表以降に実施されてきた罠の除去などの密猟対策パトロール、生息域内での獣医学的介入などの集中的な保全行動が、マウンテンゴリラの個体数増加に寄与してきた。2008年のマウンテンゴリラの個体数は約690個体と推定されたが、2018年の推定では1,000個体以上に増加した。これはこの亜種でこれまで記録した最大の個体数である。個体数の増大は協同的で改善された調査方法により、確認されている。

マウンテンゴリラの生息環境は、コンゴ民主共和国、ルワンダ、ウガンダを包含する2地域であるヴィルンガマッシフとブウィンディ-サランブウェの合計約792 km2を含む保護区内に限定されている。両地域は、増大する人口による強度に耕作された土地に囲まれている。密猟、繰り返し起こる政情不安、人間由来の病気(呼吸器感染からエボラ出血熱まで)など、本亜種に対する脅威は大きいままである。

「マウンテンゴリラの数が増えているというのはすばらしいニュースだが、この亜種はまだ「危機(EN)」の状態にあり、保全行動を続けなければならない。協同的努力がマウンテンゴリラの将来を確実にするために極めて重要である。そうした努力は、地域行動計画や、大型類人猿ツーリスト数の制限や人間との近接近を防ぐことを勧告している大型類人猿ツーリズムと病気予防に関する『IUCNベストプラクティス指針』の完全な履行を通じておこなうべきである。」とIUCN種の保存委員会霊長類専門家グループ委員長のリズ・ウィリアムソン博士は述べた。

過剰漁獲に脅かされている魚種

IUCNレッドリスト更新版によれば、2つの重要な漁業の対象である54魚種が持続不可能な漁業により脅威に晒されている。

評価されたマラウイ湖の458の魚種のうち9%が絶滅の高リスクに晒されており、地域の食糧安全保障への懸念が生じている。チャンボ類4種はマラウイの最も経済的に価値のある魚類であるが、そのうち3種(Oreochromis karongae, Oreochromis squamipinnis, Oreochromis lidole)が「深刻な危機(CR)」である。チャンボ漁業はいまや崩壊の危機にある。マラウイ国民の3分の1以上が、アフリカの3番目に大きい湖であるマラウイ湖に食料と生計を依存している。同じようなことがビクトリア湖盆地でも起こっているという最近の報告がある。ビクトリア湖では、特産淡水魚全種の4分の3が脅威に晒されている。東部アフリカのいくつかの国では地方の生計はこれらの湖の資源に依存しており、持続不可能な漁業により脅かされている。

ハタ類の全167種についての初めての評価の結果、13%が過剰漁獲により絶滅危惧となっていることがわかった。ハタ類は、経済的に価値のある象徴的な魚であり、大西洋、カリブ海、インド・太平洋地域に広く分布している。開発途上にある熱帯および亜熱帯の国々の地域社会は特に影響を被っている。IUCNレッドリスト掲載種は、定期的に再評価されており、それにより保全状況は新しく入手されたデータに基づき再定義される。個体数の動向に関するよりよい情報により、ナッソウハタ(Epinephelus striatus)は以前考えられていたよりもより絶滅危惧度合いが高いことがわかり、「危機(EN)」から「深刻な危機(CR)」に移動した。本種は、カリブ地域中で高い価値を有しているものの、過剰漁獲により1980年代以降、場所によっては80%以上も個体数が減少してしまっている。評価の結果、カモフラージュハタ(Epinephelus polyphekadion) とガグハタ(Mycteroperca microlepis)の生息状況は以前考えられていたよりも大きな懸念であり、「危急(VU)」と分類された。

「魚類資源の減少は、特に途上国の沿岸地域社会にとって、食料安全保障上の重大な懸念である。」とIUCN種の保存委員会ハタ・ベラ専門家グループ委員長のイボンヌ・サドヴィ女史は言う。彼女によれば、「一部の海産商業漁業は持続的に管理されているものの、ハタ類に関してはそのような事例は見当たらない。人口の増大は、自家消費的生計やニッチ市場にとって重要な魚種に対して過剰な需要をもたらし、輸出拡大への圧力が状況を一層悪化させている。魚の個体数減少は、世界中の魚の価格の手頃さにも大きく影響し、生きていくために自家消費用として魚に依存している人々や零細漁民、何百万人もの人たちの食糧安全保障を減殺することにもなる」。

違法伐採が木材種のヴェネを脅かしている

アフリカローズウッドの一種ヴェネ(Pterocarpus erinaceus)は世界的に重要な木材種で、IUCNレッドリストの「危機(EN)」に掲載された。家財製品にとってのにわか景気需要を満たすための伐採により脅威に晒されている。西部アフリカと中部アフリカに特有の樹木で、暗桃褐色の木材は世界的に、手頃な家具、床材、家財道具、建築材に使われている。2009年から2014年までの間に、アフリカローズウッドの一種であるヴェネの木材取引量は、中国での高い需要に合わせて、15倍も増加してしまった。

「需要がヴェネの木材の合法的供給量を上回っているため、違法取引網は大きく儲かるようになってきている。ヴェネの森林の2%以下しか保護されておらず、その生育環境の多くが紛争地帯にある。そこでは、保全の優先順位は低い。この樹種を保全するために保護区を拡張する必要がある。」とIUCN種の保存委員会植物専門家グループ共同委員長のサラ・フィールド女史は言う。

ヴェネ木材の違法取引は広く行われている。ほとんどの分布国が法律で本種を保護しているものの、違法取引を規制するために必要な資源と資金が欠如しているため、法律が執行されないことが多い。トーゴでは、2008年にはアフリカローズウッドの収穫量の4分の1が違法伐採からのものであった。サプライチェーンを通しての普及啓発の欠如がこの状況を継続させており、動物の餌、燃料、衣服染色、薬用にこの木に依存している地域社会の生計を脅かしている。アルツハイマー病と痴呆症の治療にアフリカローズウッドを使用しようという研究がおこなわれている。

その他の種:

沈香(アガーウッド)

アクイラリア属に属する沈香20種がIUCNレッドリストで評価された。そのうち13種が絶滅危惧種である。木を傷つけることにより樹脂化した部分を切り取り、香水や香料を生産するために用いる。沈香は、世界で最も高価な木材のひとつである。高価な経済価値のため、沈香は一部地域では違法伐採の脅威に晒されている。中国産の沈香(Aquilaria sinensis)は「危急(VU)」となっており、過去10年間で30%の個体数減少を被った。2006年から2011年までで、中国の広東省の税関は密輸211件を報告している。

ショクダイオオコンニャク(Amorphophallus titanum)-その悪臭のため「死体花」の異名を持つショクダイオオコンニャク(Amorphophallus titanum)は世界最大の花をつけることで知られる。本種は初めてIUCNレッドリストで評価された。インドネシアのスマトラ島固有の本種は「危機(EN)」に掲載された。これは、過去150年間に50%の個体数減少があったと推定されたことによる。個体数減少の主要な理由は木材伐採と本種の本来の森林環境がアブラヤシの植林地に改変されたことである。野外では1000個体以下しか残っていない。

メキシコゴファーガメ(Gopherus flavomarginatus) ­北アメリカで最大のリクガメであるメキシコゴファーガメ(Gopherus flavomarginatus)は、IUCNレッドリストでは、保全状況が「危急(VU)」から「深刻な危機(CR)」に変わった。自家消費用の食肉のための捕獲と広範囲にわたる生息環境喪失が原因である。メキシコのボルソンデマピミ盆地の隔離された地域に生息するこのリクガメの個体数は、過去30年間で64%以上も激減してしまった。本種はメキシコ連邦の野生生物法で絶滅危惧となっており、アメリカのニューメキシコ州とテキサス州への再導入を目的とする飼育繁殖計画の可能性を探っているところである。

:  IUCNレッドリストは新しいウェブサイトを作成した。ユーザーとの相互交流、サーチ能力、種の脅威状況の表示などが改善されている。これにより、ユーザーが探している情報を即座に、また効率よく発見することを可能にしている。それにより、世界の生物多様性を守るために必要な段階を可能にしている。レッドリストの新しいウェブの場作成に資金提供してくれたトヨタ自動車とシンクロイシティアースに特別の謝意を表したい。

参考引用文:

「少なくとも20億人もの人たちが、生存のためにマラウイ湖のような内陸淡水漁業に直接依存している。淡水漁業による漁獲のほぼ80%が、食料不足に喘いでいる途上国からのものである。そこでは、一般大衆は、奨励される毎日のカロリー摂取に必要な食料を充分採れていない。それにも拘わらず、淡水漁業資源の管理は国レベル、国際レベルでの検討事項としては優先順位が低いままである。それゆえ乱獲回避に焦点を当てた国連生物多様性戦略計画の目標6は達成されないかもしれない。それなくしては、地域社会の生計を危機に陥れ、世界のあちこちで食料不安の危険性を増大させることになる。」とIUCNの淡水産種部門長のウィリアム・ダーウォル氏は述べた。

「マウンテンゴリラのような保全の成功事例は、科学に根差した狙いを定めた保全行動が機能するということを示している。こういう理由で、われわれはIUCNレッドリストの支援を続けている。IUCNレッドリストは非常に貴重なデータを提供してくれており、種が絶滅に向かうことを防ぐための保全政策と行動が何かを教えてくれる。」とトヨタ自動車の根本恵司環境部長は述べた。

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より詳細な情報とインタビューの申し込みは下記まで:

Goska Bonnaveira, IUCN Media Relations, +41 792760185, goska.bonnaveira@iucn.org

Elaine Paterson, IUCN Global Species Programme, +44 7960241862, elaine.paterson@iucn.org

編集者への注

IUCNレッドリスト

『IUCN絶滅危惧種レッドリスト』( IUCN Red Threated Species™ )は、2011〜2020年の生物多様性戦略計画の目標12の達成に貢献する。目標12:2020年までに、既知の絶滅危惧種の絶滅が阻止され、特に衰退が最も顕著な生物の保全状況が改善され、維持される。

IUCN-トヨタパートナーシップ: 2016年5月に発表されたIUCNとトヨタ自動車との5年間パートナーシップにより、世界の人口の大部分のための重要な食糧源である28,000種以上の絶滅リスクに関する知識が大幅に向上される。このパートナーシップによってIUCNレッドリストに1,986種の動植物を追加更新できた。このパートナーシップはトヨタ環境チャレンジ2050に基づくもので、自動車の負の影響をゼロ以下に抑えつつ、同時に社会にプラスの影響を与えることを目指している。

レッドリストパートナーからの引用

植物園自然保護国際機構: 「多くが絶滅の脅威に晒されているショクダイオオコンニャク、沈香、木材樹種などいくつかの象徴的な植物種に関する新しい評価は、植物の将来の生存を保証するため、生育地内、生育地外の両方での保全行動の必要性について、優先順位を設定するための保全評価をおこなう緊急性を強調している。」

英国王立キュー植物園: 「レッドリストパートナーとして、英国王立キュー植物園は、長年にわたり、レッドリスト評価に貢献してきた。過去2年間、植物評価部門を携わせることにより、植物をレッドリストに掲載する速度を高めることを可能にした。とくに熱帯植物に重点を置いており、今では1年で1,000種の評価をおこなっている。この作業は、レッドリストに地球の生命を代表させることを確実にするために極めて重要である。種が晒されている脅威を理解することによってのみ、それに対処する効果的な行動を計画することが可能である。」とキューの保全科学部門のセレーヌ・ハーグリーブ博士は述べた。

ロンドン動物学会: 「マウンテンゴリラ、ナガスクジラ、ロスチャイルドキリンのような種の回復は、持続的で長期的な保全行動により、私たちは絶滅を防ぐだけでなく、かなりの個体数回復も可能であることを再認識させてくれた。世界の各国政府が、生物多様性の新しく野心的な戦略計画作成の議論を続けるためにエジプトに集まっていることから、私たちはこれらの事例が、世界の野生生物が回復の途につくよう政府が強力にコミットすることを勇気づけることになろう。」とロンドン動物学会のドミニク・ジェレミー事務局長は述べた。

 

今回の更新で付け加わったその他の種に関する事例

ミゾカクシ属植物の一種 - ミゾカクシ属のCyanea konahuanuiensis はハワイ固有の植物で、オアフ島のコラウ山地のコナフアヌイ山頂付近からしか知られていない。成熟個体が20株ほど見つかっているが、実生苗はほとんどなく、個体数は減少傾向にあると示唆される。既知の個体群サイズが小さいことと、分布が限定されていることから、外来の侵略性種(ネズミ、ナメクジ、ノブタ、侵略性植物)の脅威を受けやすくなっている。さらに、地すべり、ハリケーン、洪水など、突発的な現象も脅威である。花粉媒介と種子散布をおこなう在来の鳥類のほとんど(たぶん全種)が消失してしまっているようである。この植物は2018年のレッドリストで「深刻な危機(CR)」に掲載された。

マオハウヘレ(Hibiscus brackenridgei) – この種はハワイ州の州花である。希少な植物で、オアフ島、マウイ島、ラナイ島、ハワイ島に7つの下位個体群として生育している。初期のハワイ先住民が鑑賞目的で植栽していたことが報告されており、現在もなお栽培用商業取引で人気がある。野生では、侵略性の外来植物により脅かされている。外来植物は、水分、栄養、光、場所をめぐって競合するとともに、在来の生育環境を改変し、野火の頻度を増加させる。本種は外来の動物であるネズミ、ブタ、シカ、ヤギにより採食され、外来動物のいくつかはこの植物の生育環境も悪化させる。地すべり、野火、干ばつによる危険にも直面している。ハイビスカスの仲間であるこの植物はIUCNレッドリストで「深刻な危機(CR)」と分類された。

メキシコオレンジタランチュラ (Brachypelma baumgarteni) – タランチュラの一種である本種はメキシコ特産種で、ミコアカン州南東部のシエラマドレデルスルの沿岸域にしか分布していない。野外では、5年前まで本種はふつうに見つかっていたが、見つけることが難しくなってしまった。森林依存種であると思われ、市街化や農業などの人為的圧力がこのタランチュラが少なくなった主要因だと思われる。地元の情報によれば、いくつかの下位個体群はハリケーンによる影響を受けたらしい。飼育下繁殖されたものがペット取引用に供給されているが、市場の需要を満たすには十分ではない。そのため、野生個体群に対する捕獲圧がますます増大している。メキシコオレンジタランチュラは2018年、IUCNレッドリストで「危機(EN)」に分類された。

ダレルヨルヤモリ (Nactus durrellorum) - ダレルヨルヤモリ(Nactus durrellorum)はモーリシャスの固有種で、現在ラウンド島のみに生息している。この島の面積はわずか2 km²しかない。本種は過去、何度も個体数を減少させてきた。それにより、過去の分布範囲のほとんどで絶滅してしまった。生き残った場所でも、侵略性の草食哺乳類により環境が大きく悪化している。しかし、1980年代以降、侵略性種を撲滅させ、生息環境を復元し、本種を積極的に管理する保全措置が功を奏し、急速な個体数増加をもたらした。2018年までに、全個体群は27,000個体以上を有し、増加し続けていると推定されている。とは言え、侵略性種は間断なくモーリシャス諸島の島々に侵入しており、活発なコントロール努力を必要としている。他の潜在的脅威としては、極端な気候、強度なサイクロン、野火が挙げられる。本種は、2018年のIUCNレッドリストで「危急(VU)」に分類された。

 

保全状況が悪化したその他の種の例

ハタ類の一種 (Hyporthodus ergastularius) - 本種はオーストラリア沖に生息するハタの仲間の魚で、「低懸念(LC)」から「準絶滅危惧(NT)」に移動した。過去8年間で、乱獲により、ニューサウスウェールズ州では69%、クイーンズランド州では80%も個体数が減少した。この減少は、漁民、地元および国外への輸出市場に財政的な意味合いをもたらすものです。

ベイサオリックス (Oryx beisa) – ベイサオリックス (Oryx beisa)は、かつては北東部アフリカの半乾燥地・乾燥地の灌木林と草原 に広く生息していた。しかし、近年、分布面積と個体数が著しく減少した。1990年代半ばに、個体数は約26,000頭と推定された。最も最近の個体数推定値は12,000頭であり、54%の減少である。このオリックスは、肉と強靭な皮のために伝統的に狩猟されており、多くの文化でその角が魔除けとして狙われている。過剰捕獲と住居および家畜放牧の拡大が主要な脅威であり、このことからIUCNレッドリストでは、「準絶滅危惧(NT)」から「危機(EN)」へと移動した。

パラモヒキガエル (Nannophryne cophotis) - パラモヒキガエル(Nannophryne cophotis)は2004年に「低懸念(LC)」と評価されたが、今回、「深刻な危機(CR)」カテゴリーに移動した。本種は、ペルーに固有の種で、以前は普通種で数も多かった。しかし、 個体数が激減し、すでに絶滅してしまったかもしれない。このカエルが最後に見られたのは2005年であった。生息環境の喪失と鉱山活動、農地拡大、松植林による淡水の汚染が激減の理由と思われる。もちろん、カエルツボカビ症と気候変動の可能性も排除できない。

カンラン科の植物の一種Boswellia pirottae – カンラン科の植物であるBoswellia pirottae は、エチオピアでしか見つかっていない稀な樹種で、地元で香料として利用されている。計画されているギブ第4ダムのによる洪水は、低標高に生育する個体群の一部に直接影響を与えるだろう。このダムが建設されると微気象にも影響を及ぼし、残りの個体群に影響を与えるとともに、自然火災の頻度等にも変化をきたすかもしれない。2018年のレッドリストで、本種は「準絶滅危惧(NT)」から「危急(VU)」に移動した。

保全状況が改善したその他の種の例

ソルトマーシュヤモリ (Cryptactites peringueyi) – 南アフリカの東ケープ州に固有のソルトマーシュヤモリ(Cryptactites peringueyi) は以前、海岸沿いの湿原にしか生息していなかった。しかし、近年、数キロメートル内陸にまで分布を拡げており、人工の構造物を住処にしている。現在、個体数は安定していると考えられているが、本来の生息環境である海岸湿原は嵐よる高潮の増加と気候変動を関係する海面の上昇のような突発的できごとの危険の可能性もある。IUCNレッドリストで、「深刻な危機(CR)」から「準絶滅危惧(NT)」に移動した。

バナハオモリガエル (Platymantis banahao) – バナハオモリガエルはフィリピンのルソン島からしか知られていない。以前、この両生類は「危急(VU)」と評価された。これは、限定された生息範囲と生息地への訪問者による山岳環境への被害に基づいている。しかし、2009年に「保護景観地」指定のおかげで、進行中の生息環境の喪失は個体群のほんの一部にしか影響を与えていない。本種は、今回、「準絶滅危惧(NT)」に移動した。

ロスチャイルドキリン (Giraffa camelopardalis rothschildi) – ロスチャイルドキリンは現在、ケニアとウガンダの狭い地域に分布が限定されている。歴史的には、この亜種は、東部アフリカの広い範囲に分布していた。しかし、密猟、農地拡大、人口増加、生息環境の悪化と分断化により、かつての分布域のほとんどで消失してしまった。ロスチャイルドキリンは、2015年に「危機(EN)」に掲載された。以来、再導入、狩猟禁止などの法的保護の強化、国家キリン戦略行動計画作成などの保全行動により個体数が増加した。現在、野生では1,468頭が存在しており、個体数も増加している。しかし、残存している生息地間を分散移動できることは難しいため、生息域拡大の可能性は低い。この亜種の将来は、現在進行中の保全努力にかかっている。ロスチャイルドキリンは2018年、「準絶滅危惧(NT)」のカテゴリーに掲載された。